ビーチ・自然

Drive in Big Island ハワイ島のビッグネイチャーに心躍らす旅に出る

ハワイ島はBig islandの愛称で親しまれ、 訪問者にはその圧倒的なスケール感が印象に残る島だ。
この島をドライブをしていると、地平線は普通に見えるし、海と空の境界線から湧き上がるダイナミックな雲の動きに見入ってしまったり、知らぬ間にはいり込んだ雲の先に広がる光の眩しさと植物の息吹に驚きを感じたり。 この島の大きな懐に抱かれている、そんな気持ちになる。
今回は、そんなハワイ島の東海岸を走るドライブルートをご紹介する。
交通量が少なく、のんびりとした時間の流れるワイメア、ホノカア、カイルア・コナへのロングドライブ。
風と光をひとり占めして。特別な1日になること、お約束します。

海岸の町から、高原の町へ標高を一気に駆上がる。

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ワイコロアビーチの宿泊先から、高原地帯の町、ワイメアを目指す。車を走らせしばらくすると、視界には火山島特有の荒涼とした大地が広がり、ところどころでお椀を伏せたような小山がぽこぽこと地表に顔をだしている。これらは地中のマグマが地面を隆起させたもので、地熱発電の観測所がデータを採集していたりもする。実はハワイ島はクリーン・エネルギーの先端研究の場所でもあり、地熱、風力、太陽光、そして海流と、さまざまな自然エネルギーの研究が盛んだ。そんなお椀山を見ながら道は徐々にワイメアに向かって標高をあげてゆく。窓をあけていると気温の下がり方が伝わってきて、ときおり雲の中を通り抜けると、心地よいシャワーに包まれる。
ワイメアに近づくにつれ、道の周囲にはどんどん緑が多くなり、そして濃くなり、いつしか風景は草原地帯の様相を見せるようになってくる。

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香り高いコーヒーで、人生の幸せを感じるひととき。

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高原地帯にあるワイメアの町には、木造の可愛いきれいな住宅が点在し、一瞬、ハワイではなくスイスにいるような錯覚を覚える。標高が高いので、ワイコロアで着ていたTシャツのままだと少し肌寒いかもしれない。上から軽く羽織れるものをもっていくといいだろう。ワイメアは牧場経営に適した気候なのか、東京23区の1.5倍の敷地をもつ広大なパーカーランチがあり、乗馬やバーベキューなどを楽しむツーリストも多い。

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ALOHA SMILE的にはここらで、コーヒーでも飲んで一服したいところだ。ハワイ島のコーヒーといえばコナコーヒーが有名だが、ここのコーヒーもなかなか味わい深い。写真のコーヒーショップは“Waimea coffee company(ワイメアコーヒーカンパニー)”。オアフ島在住の友人がここに来ると必ず立ち寄るというオススメの店。爽やかな空気の中、すこしだけ肌寒い風に首をすくめ、香ばしいコーヒーの香りを楽しんでいると、なんか、自分もけっこう豊かな人生を送っているんじゃないかと思えてくる。幸せって、こういう小さなところに転がっているものなのかもしれない。
「運転しないから飲んでも大丈夫!」というひとは地ビールの醸造所に足を運んでもいいかもしれない。最高の地ビール飲み比べの体験ができる。

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ワイメアから、映画『ホノカアボーイ』で有名になったホノカアの町へ向かう。
普通はママラホア・ハイウェイという道を東へまっすぐ走ればいいのだが、今回はすこしはずれた旧道“オールド・ママラホア・ハイウェイ”を進む。この道は、森の中と丘陵地帯を抜ける細いワインディングロードで、ツールドフランスのコースを彷彿とさせる車好きには堪らない道だ。
ハワイ島に多い地平線へむかって一直線の雄大な道も楽しいが、そればかりだと眠くなってしまうのも事実。
ハンドルを右へ左へ。たまにはこのような旧道を選択して、存分にドライブの楽しさも満喫したい。
旧道へ入ってすぐ現れる牧場。その遥か彼方に見えるマウナケア山頂に光る銀色の天文台。
すれ違う自転車乗り。わき道ならではの風景との出会いを楽しもう。

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映画の舞台そのまんま。住んでみたくなるホノカア。

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オールド・ママラホア・ハイウェイの終盤、長い下り坂が続くようになり、眼下に海が開けてくれば、ホノカアの町に到着する。映画『ホノカアボーイ』で見たままの、あのどこか懐かしい町並みに巡り会う。ここは歩いている人もほとんど見かけない、本当に静かなスモールタウンだ。アンティークショップが似合う町でもあり、店内をのぞいてみると、食器類やアロハシャツなどの結構な掘り出しものと遭遇する。
もちろん『ホノカアボーイ』に出ていたグレースおばさんのショップには絶対に行っておきたい。あのとびっきりの笑顔に会えるはずだ。また、アンティーク以外にも洒落たブティックやアートギャラリーなどもあるので、歩いて回れる小さな町だが、時間の流れを忘れさせてくれる。

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大きな風景に抱かれ、思わず心が澄みわたる。

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ホノカアを過ぎたら、一度は行っておきたい景勝地のひとつ、ワイピオ渓谷を目指す。車を走らせること約20分。どんつきにある駐車場に車を停めて、展望台から渓谷を眺める。そこに広がるのは、思わず「おぉ~!」と声がでてしまうほどの雄大な絶景。
はるか下に見える扇状地には一体どんな世界があるのだろうと、思わずワクワクする。駐車場から一気に渓谷の谷底まで下りてゆく急坂は四輪駆動でなければ進入することができないため、四駆ツアーに参加するか、徒歩で自力で下ってみるか、あるいは下らずに展望台から景色だけをみて満足するかの三択を迫られる。しかし、この絶景を目にすれば、いやでも谷底まで下りたくなることだろう。
そして、下りてみた方がいい。恐怖を覚えるほどの急坂を谷まで下りると周囲はうっそうとした濃い緑の匂いに囲まれ、空が狭くなる。その中を小さな小川が流れ、タロイモ畑が広がる。そして、少し奥まで歩くと有名なヒイラヴェの滝が姿をあらわす。

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ゆったりと馬に乗って散策するツアーの人たちや野良馬たちとすれ違いながら進んでゆくと、ツーリストがほとんどいない黒っぽい砂のビーチへと出る。

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そこは静かな静かな谷の底だ。山に跳ね返る潮騒の残響に耳を澄ませ、太平洋と正対すると、自分が自然の一部だと実感できる。そんな特別な瞬間を味わえる場所だ。

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ビッグネイチャーを満喫したら、最後は人のぬくもりを感じられる場所で癒されたい。
ということで、ワイピオ渓谷からの帰途、宿泊先のワイコロアを通り過ぎ、カイルア・コナまで足を伸ばす。目的はサンセット。コナはハワイ島の中でもっとも賑やかなエリアで、サンセットを楽しみながら食事やお酒を楽しむには絶好のロケーションだ。賑やかと言っても、ワイキキに慣れた目にはのんびりとした静かなビーチウォークに見える、人気のスモールタウンだ。

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地球の息吹を実感する溶岩流の刻印。

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コナ国際空港の脇を通るクイーン・カアフマヌ・ハイウェイを一路コナへ。黒い溶岩大地の中、地平線までつづく一本道を疾走する。車窓にはハワイ島特有の白い石で描かれたさまざまなコーラル文字が流れてゆく。この道を走る車は本当に飛ばす。夕方にかけて徐々に通行量が増える中、あまりに安全運転をしているとクラクションを鳴らされ、あおられるが、落ち着いて運転したい。そして、コナにはいる手前にひとつ寄っておきたい場所がある。
それは、道の左側にあるラヴァチューブ。ハワイ火山国立公園内のラヴァチューブとは少し雰囲気が異なり、茶色と黒の岩が大量に崩れた工事現場みたいにみえるが、火山島Big Islandならではの風景だ。
ラヴァチューブとは、高熱の溶岩の表面が空気に触れて冷やされ、固まり、それがチューブの外壁となって、内側の溶岩が流れ去ったあとに残された空洞のこと。
それがハイウェイのすぐ脇にある。ちょっとの時間、車を停めて、そんな地球の営みにそっと触れてみてはいかがだろうか。

夕陽を浴びるこの場所で1日の終わりを締めくくる。

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コナに到着したのは夕刻。夕焼けに染まる空は火山灰を含み少しグレーを帯びていてオアフとは違うハワイ島らしさを演出している。海岸沿いを流れる風と、可愛い町並みにすべりこむ光が、気持ちよく身体を包み込む。ローカルのひとびとは、一日の終わりをそれぞれの方法で楽しんでいるようだ。子供たちはメインストリートに沿った堤防の向こう側でボディボードを楽しみ、大人たちは仲間とカヤックを漕いで夕焼けの光に溶け込む。ゆったりと、自分を大切にする時間が流れている。ツーリストである我々もそんな彼らの日常をうらやましく眺めているうちに、いつしか自分の中の時間のリズムが心地よく変化していることに気づく。

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“Live Better Stories. (より素晴らしいストーリーを生きよう)”

心の声のおもむくままに、ビーチ沿いのショップやレストランを冷やかしながら散策し、一軒の居心地の良さそうな店にたどりつき、席にすわる。そして、すっかり涼しくなった夕陽を浴びながら、すこし甘いプランテーションアイスティーを飲むことにした。きっと、もっと素晴らしいストーリーが、私たちの未来には待っている。そんな願いを抱きながら。

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最後に。

日没後のハイウェイは非常に暗い。ロングドライブで疲れていると思うので、みなさま、気をつけてホテルまで帰ってください。そして、もし晴天の夜ならば、路肩に駐車して夜空を眺めてみよう。マウナケアまで行かなくとも、サドルロードまで行かなくとも、空からこぼれんばかりの星空が、きっとあなたの視界に飛び込んでくるはずだ。
それは決して忘れえぬ特別な時間となるだろう。

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